自宅を長男に相続させたいが、次男、三男に分割できる財産がないので何かよい遺留分対策はありませんか?という質問をよく受けます。(相続人は長男、次男、三男のみとして以下説明いたします。)

この場合、父親(被相続人)が生命保険を契約し、受取人を長男とする生命保険に加入することをおすすめいたします。

なぜ遺留分対策をする必要があるのか?

遺留分とは父(被相続人)の財産のうち、相続人が最低限受け取る権利の割合のことをいいます。上記の例でいうと、各相続人はそれそれ最低でも法定相続分の2分の1をもらう権利があるということになります。

この場合、財産の6分の1を最低でももらう権利が各相続にありますので、次男、三男も財産の6分の1は最低でももうらう権利があります。

たとえ遺言書で長男に自宅を相続させたとしても次男、三男は財産の6分の1を最低でももうらう権利があるということです。

長男は次男、三男にその代償としてお金などの財産を渡さなければ遺留分が侵害されたとして、遺留分の減殺請求がなされ、長男にお金がない場合は、借入や自宅の共有、最悪の場合、自宅を売却しなければならなくなるかもしれません。

ちなみに、長男が次男、三男にその代償としてお金などの財産を渡すことを「代償分割」といいます。

なぜ、生命保険を活用した方がいいの?

ポイントは、長男が自宅を相続した場合、長男が代償として次男、三男の遺留分の侵害をしない程度のお金を渡すことができれば、自宅を長男に問題なく相続させることができます。

代償財産として資金を確保するために、長男を受取人(父が被保険者で契約者かつ保険料負担者)とした生命保険を活用します。生命保険を活用するメリットは下記の通りです。

・死亡保険金は遺産分割や遺留分の対象にならない。

死亡保険金は本来の相続財産ではなく、受取人の固有の財産となり、遺産分割や遺留分の対象になりません。

長男を受取人にした場合、遺産分割とは関係なく受け取れるので、そのお金で代償分割を行うことができます。

もし、生命保険ではなく預金ですと、遺産分割の対象となりますので、遺留分の額が多くなりますので、代償分割の資金を多く確保する必要があります。

また、遺産分割で争った場合は預金ですと、預金口座のお金をおろすことができませんが、死亡保険金は受取人の固有の財産なので、自由に使うことができます。

・相続税の節税対策

死亡保険金は本来の相続財産ではありませんが、相続税法上は「みなし相続財産」として扱われ、相続税の対象となります。

ただし、非課税枠があり、「500万円×相続人の数」が非課税となりますので、預金を残しているよりは生命保険を活用したほうが節税対策になります。

上記の例ですと500万円×3名(長男、次男、三男)の1,500万円までが非課税となります。

生命保険活用の注意点

次男、三男を生命保険の受取人にしてもいいのでは?と考えられる方もいるかもしれませんが、次男、三男を保険金の受取人にした場合、遺留分対策になりません。

遺留分対策を行う場合は長男を受取人にしなければなりません。死亡保険金は相続財産に含まれないので分割対象にはならず、受取人である次男、三男の固有の財産となります。

結局、長男は次男、三男の遺留分を代償する必要が生じるからです。

代償分割をおこなう場合の注意点

長男が次男、三男にその代償としてお金などの財産を渡すことを「代償分割」といいますが、遺産分割協議書に代償分割の記載がない場合には贈与となり、贈与税が課されます。

代償財産がとして渡すお金が贈与とならないように、遺産分割協議書には代償財産として記載するようご留意ください。

 

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