遺産分割が決まるまでの不動産所得は誰が確定申告する?
年の途中で亡くなった方に不動産所得がある場合、相続人が、1月1日から亡くなった日までの不動産所得については、相続の開始を知った日の翌日から4か月以内に準確定申告を行うことになります。
では、亡くなった日の翌日から遺産分割が決まるまでの不動産所得については、①遺産分割協議で不動産を相続した相続人が申告するのか、②各相続人が法定相続分に応じて申告するのか、どちらでしょうか。
結論から申しますと、②各相続人が法定相続分に応じて申告することになります。
例えば、令和3年3月31日に亡くなり、遺産分割協議が令和3年8月31日に成立した場合、令和3年4月1日~8月31日の不動産所得については、各相続人全員が法定相続分に応じて確定申告することになります。令和3年9月1日~令和3年12月31日の不動産所得については、実際に不動産を相続した相続人が確定申告を行うことになります。
民法909条には「遺産の分割は、相続開始の時にさかのぼってその効力を生ずる。」とあるので、遺産分割協議が成立した場合は不動産賃料も実際に不動産を相続した相続人のものになるのでは?と思わるかもしれません。
ただ、これについては最高裁の判決(平成17年9月8日判決)が出ており、国税庁も同様の見解となっております。(タックスアンサーNo.1376 不動産所得の収入計上時期)
民法898条で「相続人が数人あるときは、相続財産は、その共有に属する。」と規定されており、遺産分割協議の成立前の不動産賃料は共有財産から生じたものであるので、遺産とは別個の財産であり、遺産分割協議の影響を受けないとしております。
不動産賃料は共有状態の相続財産から生み出された遺産とは別個の財産なので、遺産分割が成立する前の不動産賃料は各相続人の法定相続分に応じて帰属することになります。
例えば、子3人が相続人の場合、各相続人が3分の1ずつ不動産収入があったものとして確定申告を行うことになります。
上記で説明したように、相続財産に賃貸不動産がある場合は、遺産分割協議が成立するまでの期間については相続人全員が確定申告を行うことになります。
節税対策
相続人全員が確定申告を行うことになるので、節税対策の観点からは、相続人全員が青色申告承認申請書を期限内に税務署に提出し、青色申告の特典である10万円又は65万円(55万円)の特別控除を受けた方が節税対策になります。
青色申告承認申請書には提出期限がありますので、相続財産に賃貸不動産がある場合は、相続人全員が青色申告承認申請書を税務署に提出するか否かを検討することをお勧めいたします。
相続により事業を承継する場合の相続人の所得税の青色申告承認申請書の提出期限については下記サイトをご参照ください。
相続により事業を承継。相続人の所得税の青色申告承認申請書の提出期限