相続放棄を検討している方は必見!準確定申告はしないほうがいい?


相続人は、相続人になったことを知った日 (通常は被相続人が亡くなった日) から下記3つのいずれかを選択することになります。

 ①単純承認・・・預金、土地等のプラスの財産も借金などのマイナスの財産もそのまますべて受け継ぐ方法

 ②相続放棄・・・預金、土地等のプラスの財産も借金などのマイナスの財産も、すべて受け継がない方法

 ③限定承認・・・預金、土地等のプラスの財産の範囲内で被相続の債務の負担を受け継ぐ方法

②、③を選択する場合は、相続人となったことを知った日(通常は被相続人が亡くなった日)から3か月以内に家庭裁判所に申述する必要があり、②相続放棄は各相続人が単独で行えますが、③限定承認は相続人全員で行う必要があります。

②相続放棄を選択する場合は、3か月以内に家庭裁判所に「相続放棄申述書」を提出し、放棄することになります。

一方、被相続人が年の途中で亡くなった場合は、相続人は相続の開始があったことを知った日(亡くなった日)の翌日から4ヶ月以内に、準確定申告書を、税務署に提出しなければなりません。

何らかの理由により、相続放棄を検討されている方が、準確定申告を行ってしまうと、①「単純承認」をしたものとみなされてしまい、相続放棄が認められない可能性があります。

具体的には、相続放棄を検討されている方が、準確定申告を行い、被相続人の所得税の還付請求をしてしまうと、被相続人の債権を取り立てる行為に該当し、民法921条1号の「相続財産の処分」にあたり、単純承認したとみなされ、相続放棄ができない可能性があります。(参考:最高裁昭和37年6月21日判決)

また、相続放棄をした場合は、初めから相続人とならなかったものとみなされますが(民法939条)、準確定申告は相続人が行う行為ですので(所得税法124条1項、125条1項)、準確定申告を行う行為自体が、自分が相続人であることを対外的に示し、単純承認をするという意思表示ととらえられる可能性があり、相続放棄ができない可能性があります。

相続放棄を検討されている方は、準確定申告を行わないようにご注意ください。

相続放棄を検討されている方は、準確定申告以外にも、被相続人の預貯金の払い戻しや解約、債権の取り立て、不動産・動産の名義変更等は行わないようご注意ください。

参考条文

民法

(単純承認の効力)

第920条 相続人は、単純承認をしたときは、無限に被相続人の権利義務を承継する。 

(法定単純承認)

第921条 次に掲げる場合には、相続人は、単純承認をしたものとみなす。
一 相続人が相続財産の全部又は一部を処分したとき。ただし、保存行為及び第六百二条に定める期間を超えない賃貸をすることは、この限りでない。
二 相続人が第九百十五条第一項の期間内に限定承認又は相続の放棄をしなかったとき。
三 相続人が、限定承認又は相続の放棄をした後であっても、相続財産の全部若しくは一部を隠匿し、私にこれを消費し、又は悪意でこれを相続財産の目録中に記載しなかったとき。ただし、その相続人が相続の放棄をしたことによって相続人となった者が相続の承認をした後は、この限りでない。

(相続の放棄の効力)

第939条 相続の放棄をした者は、その相続に関しては、初めから相続人とならなかったものとみなす。

所得税法124条1項

第124条  確定申告書を提出すべき者等が死亡した場合の確定申告

 第120条第1項(確定所得申告)の規定による申告書を提出すべき居住者がその年の翌年1月1日から当該申告書の提出期限までの間に当該申告書を提出しないで死亡した場合には、その相続人は、次項の規定による申告書を提出する場合を除き、政令で定めるところにより、その相続の開始があつたことを知つた日の翌日から4月を経過した日の前日(同日前に当該相続人が出国をする場合には、その出国の時。以下この条において同じ。)までに、税務署長に対し、当該申告書を提出しなければならない。

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